キイトルーダ®とトラスツズマブ+化学療法の併用療法を受けられる
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キイトルーダ®とトラスツズマブ+化学療法の併用について

化学療法について
がん細胞の増殖
正常な細胞は、際限なく増殖することがないようにコントロールされていますが、なんらかの原因によりその遺伝子に変化(遺伝子変異)が起こると、細胞は異常な分裂と増殖を繰り返すようになります。このような細胞をがん細胞といいます。

化学療法について
化学療法は、殺細胞性抗がん剤を用いて活発に分裂しているがん細胞の増殖を阻止することで、がん細胞を死滅させる治療です。正常細胞の増殖にも影響があります。


キイトルーダ®とトラスツズマブに併用する化学療法について
PD-L1陽性かつHER2陽性胃がんの初回薬物治療(1次治療)のひとつに、免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダ®と分子標的薬(トラスツズマブ)と化学療法(フッ化ピリミジン系抗がん剤+プラチナ系抗がん剤)の併用治療があります。

キイトルーダ®とトラスツズマブに併用する化学療法
フッ化ピリミジン系抗がん剤
カペシタビン、5-FU、S-1は、がん細胞がDNA*3を作るために必要な酵素の働きを抑制することで、DNAの複製を妨げ、がん細胞を死滅させたり、増殖を抑えたりします。
プラチナ系抗がん剤
細胞が増殖するためにはDNAの複製が必要です。オキサリプラチン、シスプラチンは、がん細胞のDNAと結合してDNAの複製を妨げ、がん細胞を死滅させたり、増殖を抑えたりします。
*1 5-FU(フルオロウラシル)
*2 S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)
*3 遺伝子の情報を持つ分子

分子標的療法(分子標的薬・抗体薬物複合体)について1-3)
分子標的薬とは、がん細胞の増殖に関わるタンパク質や、がん細胞に栄養を運ぶ血管を作るときに必要な因子、細胞同士の接着に関わるタンパク質など、がん細胞に特徴的な分子を標的としてがん細胞を攻撃することを目的とした薬です。
分子標的薬には「小分子化合物」と「抗体薬」の2種類があり、最近では、抗体薬に抗がん剤を結合させた抗体薬物複合体という新しい種類の薬も登場しています。
トラスツズマブはがん細胞の増殖に関わるHER2タンパクを標的とした分子標的薬であり、HER2タンパクの働きを妨げることで、がん細胞の増殖を抑える薬です。

さらに、トラスツズマブがHER2タンパクに結合すると、それを攻撃の目印として免疫細胞が引き寄せられ、がん細胞を破壊していくと考えられています。

HER2検査について4)
トラスツズマブはHER2タンパクを標的とするため、HER2タンパクをたくさんもっているがん細胞にのみ効果を発揮します。そのため、がん細胞がもつHER2タンパクの量を調べ、トラスツズマブの使用が適しているかどうかを判定する必要があります。
HER2タンパクがどれくらいあるかをみるには、タンパクの量を調べる方法(IHC法)と、タンパクをつくるもとになる遺伝子の量を調べる方法(ISH法)があります。

1) 佐野武 監. 胃がん 完治をめざす最新治療ガイド, 講談社, p56-63, 2016
2) Sahin U et al. Clin Cancer Res 2008; 14: 7624-7634
3) Maadi H et al. Cancers (Basel) 2021; 13: 3540
4) 日本胃癌学会 検査の手引き製作委員会 編:切除不能進行・再発胃癌バイオマーカー検査の手引き 第1.1版:2024, p7より作成

キイトルーダ®(免疫療法)について
私たちの免疫機能と胃がん
私たちの体内には、病気をひきおこす細菌やウイルス、がん細胞などから体を守る「免疫」という防衛機能が備わっています。
T細胞などのリンパ球による免疫機能は、がん細胞を攻撃し体内からがん細胞を排除しています。

しかし、がん細胞は生き残るために免疫機能による攻撃に対しブレーキをかける信号を送ります。ブレーキをかける信号は、がん細胞などの表面に発現したPD-L1というたんぱく質がT細胞表面のPD-1と結合することにより発信されます。

キイトルーダ®(免疫チェックポイント阻害薬)について
免疫チェックポイント阻害薬であるキイトルーダ®はT細胞表面のPD-1に結合することにより、がん細胞がT細胞に送るブレーキをかける信号を遮断します。その結果T細胞のブレーキは解除され、がん細胞への攻撃が再開することで、抗がん作用が発揮されると考えられています。


キイトルーダ®とトラスツズマブ+化学療法の併用治療について
キイトルーダ®はがん細胞を攻撃するT細胞の機能を活性化し、トラスツズマブはがん細胞の増殖を抑え、免疫細胞をがん細胞に引き寄せることでがん細胞を破壊します。また、化学療法はがん細胞を直接攻撃します。これらを併用して治療すると、異なる作用でがん細胞を攻撃するため、それぞれの治療効果が期待できます。
一方、各薬剤には副作用がありますので、些細なことでもおかしいなと思うことがあれば、すぐに医師や看護師、薬剤師に相談することが大切です。

キイトルーダ®とトラスツズマブ+化学療法の併用治療を受ける際は、PD-L1やHER2ががん細胞でどれくらい発現しているか確認します。PD-L1検査に関する詳しい情報は「胃がんの22C3抗体を用いたPD-L1検査を受けられる患者さんとそのご家族の皆さんへ」冊子をご確認ください。
